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2014年1月24日

ICMI2013 参加報告

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|◆ ICMI2013 参加報告
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平山高嗣(名古屋大学)
岡田将吾(東京工業大学)
米谷竜 (東京大学)

 マルチモーダルインタラクションに関する国際会議「15th ACM International
Conference on Multimodal Interaction」(ICMI2013)が2013年12月9日から13日
までオーストラリアのシドニー近郊にあるCoogee Bay Hotelで開催された.ICMI
は,多様なモダリティに着目した次世代の知覚的,適応的インタフェースに関す
る毎年開催の国際会議で,人間と人間のインタラクションの分析,その知見を応
用した人間と機械のインタラクションのモデル化,マルチモーダルインタフェー
スの設計と構築,およびその評価に関わる学術的に極めて質の高い発表が行われ
る.今回は,27件の口頭発表(採択率20%),22件のポスター発表(同17%),3件
の基調講演で構成され,例年通りシングルセッションで運営された.また,サテ
ライトイベントとして,博士課程の学生のための研究発表の場を提供するDoctoral
Consortium,共通のデータセットでアルゴリズムの性能を競う5つのGrand
Challenge,3つのWorkshopが企画された.
 参加者は168名,そのうち日本からの参加者が23名で,国別ではアメリカに次いで
2位であった.これは,開催地が日本からアクセスしやすいオーストラリアであった
ことや,日本の研究機関から本会議の企画運営に3名(間瀬健二先生(名古屋大学)
,西田豊明先生(京都大学),平山),ワークショップの企画運営に2名(中野有紀
子先生(成蹊大学),黄宏軒先生(立命館大学))が携わったことも要因として挙
げられる.日本のグループからの発表件数が本会議で全49件中7件,サテライトイベ
ントで9件にのぼったことからも日本におけるマルチモーダルインタラクション研究
の盛り上がりと,レベルの高さを表しているものと考えられる.とにかく,日本か
らの参加者の活躍が目立ったICMI2013であった.
 ICMIの特徴の一つとして,筆者らが企画したユニークなDoctoral Consortiumが挙
げられる.博士課程の学生は,発表の機会を与えられるだけでなく,メンターとし
て起用されたHCI分野の著名な産学研究者と”円卓を囲んで”,研究成果や博士論文の
執筆に至るプランについて議論を行うことができる.さらに今回は,ランチタイム
にメンター各々が自己のキャリアパスを披露し,それを議論の種としてパネルディ
スカッションを行った.このような活動が若手のコミュニティ作り促進に貢献した
ことは明らかであった.なお,ICMIでは,Doctoral Consortiumでの発表の権利を得
た学生の参加渡航費用をほぼ全額サポートしている.興味をお持ちの方はぜひICMI
2014 Doctoral Consortiumへの論文投稿の準備を始めていただきたい.
 VR学会に関連する発表テーマとしては,バーチャルエージェント,タンジブルイ
ンタフェース,モバイルインタフェース,ビジュアライゼーションなどが挙げられ
る.今回は特に,インタラクションの参与者の「個性」,「感情」といった内部状
態の推定に関する発表や,計測モダリティについては「視線」に関する発表が多か
った.今後これらが,実利用されるヒューマンインタフェースおよびヒューマンコ
ンピュータインタラクションの設計における最重要な要素になるであろうことが顕
在化した.また,コンピュータビジョン,マルチメディア,ソーシャルメディア分
野などを席巻している機械学習がマルチモーダルインタラクション分野に浸透して
いることも明らかであった.心理学研究者も多く参加するため,VRの設計,評価に
ついても有意義な議論を交わすことができるものと思われる.人間が関わる系に分
析,設計,開発,評価といった様々な視点からアプローチするマルチモーダルイン
タラクション研究,そしてそれらが会するICMIは,多くのコンピュータサイエンス
研究者のターゲットとなり,今後ますます盛り上がりを見せるものと期待できる.
 次回のICMI2014はトルコのイスタンブールにて,11月12日から16日に開催される
予定である.

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