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2012年4月25日

Laval Virtual2012 参加報告

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|◆ Laval Virtual2012 参加報告
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坂井拓也(神奈川工科大学)

 古城群で有名なフランス・ロワール地方の小都市Laval市で,2012年3
月28日から4月1日の5日間,今回で14回目となる「Laval Virtual」が開
催された.Laval Virtualは欧州最大のVRイベントであり,大学や研究
室によるデモンストレーション展示と,企業等の最新技術の展示に加え,
国際会議の「Virtual Reality International Conference(VRIC)」があ
る.今年は,前半3日間のビジネスデーに4,400人,週末の一般公開に8,
900人,合わせて13,300人の来場者を記録した.
 Laval Virtualには「Awards」という表彰部門があり,専門家らで構
成される審査員チームによって,大賞とおよそ10のVR作品が表彰される.
日本からの受賞作品も多くみられ,今年はチームラボの「What a 
Loving and Beautiful World」が“建築・芸術・文化賞”,電気通信大
学の「ClaytricSurface」が“産業デザイン・シミュレーション賞”,
「SplashDisplay」が“3Dゲーム・エンターテイメント賞”,慶應大学
の「TECHTILE Toolkit」が“先端技術賞”を獲得した.またLaval Vi
rtualは2004年より日本バーチャルリアリティ学会が主催する「国際学
生対抗バーチャルリアリティコンテスト(IVRC)」と提携しており,優秀
作品を1チームずつそれぞれのイベントに招待している.IVRC2011から
は慶應大学の「Petanko Roller」が招待されデモンストレーション展示
を行った.フランスの学生作品から選ばれるIVRC賞の発表もこのAwards
のなかで行われており,今年のIVRC賞はESCINの「Anatomia」に決まっ
た.この「Anatomia」は,スポーツや医療の教育で用いられること
を目標としたシステムだ.このシステムは,実際の人の背中に骨格や筋
肉の情報を投影する点が特徴的で,利用者は人体について学ぶことがで
きる.この時デバイスに触れることなく,情報が投影された背中に直接
触れることで,骨格情報や筋肉の付き方などから見たい情報を選択する
ことができるというインタラクティブなシステムだ.この作品は今年の
IVRC2012で展示される予定だ.
 今年は,慶應大学大学院メディアデザイン研究科の稲見昌彦教授の基
調講演が行われた.マンガ・アニメ・映画などのポップカルチャーと日
本の先端技術との関連が述べられた部分では,これらの関連性を普段意
識していない海外の聴講者にとっても非常に興味深かったようだ.
 Laval市はバーチャルリアリティを中心に都市開発を進めており,市
内の軍施設の跡地には大規模なVR都市開発の計画が発表された.7,
000m2の土地にVRの研究施設がならぶイメージはまさに「VRの首都」だ.
さらにLaval市では今後7年間で,フランスで初めて市内すべての企業・
家庭に光ファイバーを配備するという計画が産官連携で進んでいる.成
長を続けるLaval Virtualであるが,VRの今後をどのように変革させて
いくのか目が離せない.
 Laval Virtual 2013は来年3月20日から24日の開催が決定している.
http://www.laval-virtual.org/
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