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2012年10月25日

ICDVRAT2012 参加報告

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|◆ ICDVRAT2012 参加報告
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曽根 雅史(九州工業大学)

 2012年9月10日~12日までの3日間,フランス・ロワール地方のラヴァルにて,
ICDVRAT2012 (9th International Conference Series on Disability, Virtual
Reality and Associated Technologies)が開催された.ICDVRATはバーチャルリア
リティ(以降VR)や脳・身体に何らかの障がいを持つ人に対する支援技術についての
国際会議であり,今年で9回目の開催となる.また開催地であるラヴァルは,1999
年以降毎年行われている欧州最大のバーチャルリアリティコンベンション「ラヴァ
ル・バーチャル」の開催地としても知られており,VR研究に取り組む教育研究機関
や研究者も多いようである.
 本会議は,全13の口頭発表セッションで総数50件の発表があった.セッション名
はStroke Rehabilitation I&II, Cognitive Rehabilitation I&II, Augmented
Reality, Visual Impairment I&II, Hearing Speech, Motor Rehabilitation,
Training Assessment I&II, Design Analysis, Interfacing to Virtual
Environments の題目で,Short Paperでの発表は全部で28件であった.
 Keynote Presentationは2件で,まずProf. Pierre-Alain Josephによる認知リハ
ビリテーションのためのバーチャルリアリティについて研究紹介された.もう一件
はProf. Alma Meriansによる研究で,VRが脳神経回路損傷後の運動回復や再学習に
効果的な方法として妥当であるかどうかが議論された.
 Short Paper Presentationは,ポスター発表及びデモ実演であった.まずポス
ター発表の前に檀上で1枚のスライドを使って1分間以内に研究概要のアピールを
しなくてはならない.私も,この1分間紹介を行った.台詞はよく整理していたつ
もりだったが,よく聞こえるようゆっくり話し始めたため,中盤で1分間を迎えて
しまった.苦心している私を見て,タイムキーパーが笑いながら大げさに静止しよ
うとし,私がマイクを持って逃げようとするコミカルな一場面もあり,本会議が最
新の研究報告と議論の場であると同時に,とてもアットホームな会議であることが
実感できた.
 デモ実演では,Kinectを用いたデモが多く見受けられ,プレイヤーの動きを読み
取って画面上に表示させるのに利便性が大きく,リハビリ支援としても有用性が高
いようであった.特に印象に残っているものは,反射神経に注目したものと数字を
用いた認知課題であった.第一は,画面上に映し出されたプレイヤーに向かって
ボールが飛んでおり,それを打ち返すものである.第二は,テーブル上で表示され
た数字の配列の中に抜けている数字の正解を類推し,手足を使うことで連動する数
字が移動して配列に収めるというものだった.これらは,認知と運動の連動に注目
しており,リハビリ支援におけるVRの有効性について考えを深める良い機会となっ
た.
 私の研究分野はロボット工学で,ICDVRATへの参加は初めてであったがVR技術に
は興味があり,今回の研究発表や議論でVRのリハビリ応用やその周辺の最新技術に
ついて知ることができ,とても有意義な会議となった.学会のランチタイムでは,
議論を交わしやすいようにテーブルが円卓で,ランダムに座るようになっていた.
このように研究者同士の話が英語で飛び交う様子を間近にし,私自身も議論に参加
ができたことは,海外渡航経験の少ない私には,新鮮であり刺激的な体験となっ
た.

URL: http://www.icdvrat.reading.ac.uk/

Category: 学会参加報告