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2013年7月25日

第23回人工現実感研究会 参加報告

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|◆ 第23回人工現実感研究会 参加報告
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 竹内俊貴(東京大学)

 2013年6月25日,26日の2日間,第23回人工現実感研究会が,東京大学・本郷キャ
ンパスの山上会館にて開催された.今回の研究会は,日本バーチャルリアリティ学
会並びに電子情報通信学会マルチメディア・仮想環境基礎研究会(MVE)の共催,
ヒューマンインターフェース学会研究会(SIG-VR)及び映像情報メディア学会ヒュ
ーマンインフォメーション研究会(ITE-HI)との連載であった.2日間で延べ100名
の参加者を集め,「AR」,「応用」,「インタフェース」,「知覚・触覚」の4セ
ッションにて,計16件の口頭発表が行われた.多くの興味深い研究発表が行われた
が,ここではその内の3件について紹介する.
 一つ目は,東京大学の中里らによる「ビデオチャットを用いたブレインストーミ
ングにおける表情変形の効果」である.この研究は,ビデオチャット中の会話相手
の表情を笑顔や悲しい顔に変形させて見せることで,ブレインストーミングにおけ
るクリエイティビティが向上するかを検討するものであった.ビデオチャットと提
案システムを介して2人1組でブレインストーミングを行ってもらう実験を行い,笑
顔変形を行った場合に,ブレインストーミング課題に対する回答が有意に上昇する
という結果が報告された.
 二つ目は,東京大学の後藤らによる「可視光通信プロジェクタ映像鑑賞時の時空
間周波数特性の計測」である.可視光通信プロジェクタが投影画像を空間分割して
点滅させるために「ちらつき」が知覚されやすい問題に対し,ちらつきの見えにく
い時間周波数と空間周波数の関係を調べていた.空間分割を細かくしていくと,1
ブロック当たり視角0.2°前後で最もちらつきが見えやすくなり,0.1°前後まで細
かくするとちらつきがほとんど知覚されなくなるという結果を報告していた.この
報告は,可視光通信プロジェクタを利用するシステムの設計において有用な知見と
なると感じた.
 筑波大学の山下らによる「遠隔地における1自由度形状触知覚システムに関する
研究」では,1自由度力覚提示装置Feel Throughの計測部と力覚提示部を切り離す
ことで,遠隔地において形状知覚を行うシステムを提案していた.実験により,電
動雲台を用いた単純なスレーブロボットによる実装にも関わらず,形状知覚が可能
であったことを示していた.
 今回の研究会は,昨年度の第22回人工現実感研究会に比べて少ない発表件数では
あったが,2日間を通じて活発な議論が行われ,発表者,参加者双方にとって充実
した研究会となったように感じられた.

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