HOME » 学会参加報告 » INTERACT2015 参加報告
2015年10月30日

INTERACT2015 参加報告

+———————————————————————-+
|◆ INTERACT2015 参加報告
+———————————————————————-+
三浦貴大(東京大学)
 IFIP INTERACT 2015はHuman-Computer Interaction全般を扱う国際学会である.テーマを”Con-nection. Tradition. Innovation”として, 9月14日〜18日にかけて,世界遺産の街であるドイツのバンベルグにて開催された.14〜15日はワークショップが行われ,16〜18日が本会議であった.
 本会議では,3件の基調講演,48セッションのペーパーセッション(Long papers:93件,Short papers:74件.採録率はそれぞれ29.6%,26.8%)が行われた.この他,ポスター(30件)とデモ(8件)のセッションなどが設けられた.発表分野は非常に幅広く,基礎的なインタフェース設計論から,VR/ARやウェブシステム,ロボットなどにも至り,アクセシビリティ,ヘルスケアなどのトピックも扱われた.参加者数は約500名であり,出身国数は48カ国であった.IFIPが情報技術の国際的推進と開発途上国の支援を目的とした機関であるためか,途上国からの参加者が他学会より多く見受けられた.
 本学会では,参加者の満足度を高める工夫が幾つか凝らされていた.本会議の朝一番には,その日のペーパーセッションの発表者が30秒で各人の研究内容を紹介するセッションが設けられた.HCI関連領域を全般的に扱う学会で,このような取り組みが行われるのは画期的と感じた.
 初日のKeynoteでは,William Gavor氏(Goldsmiths, University of London)が,デザイン主導アプローチによる人と技術のインタラクションについて講演を行った.彼は,自身が提唱したLudic designというコンセプトに則って開発したシステムを紹介した.Ludic designとは,使用者が目的なしに楽しんで使える上,何かしらの興味を広げられるようなデザインである.このコンセプトに則って作られたDrift table,Design workbooksなどに関する研究は,想定された/されていないモノとヒトとのインタラクションを調査する方法論として参考になると感じた.最終日のKeynoteはVirpi Roto (Aalto University)氏により”Towards Distinctive User Experiences”と題する講演を行った,差別化のためのUX,一貫したブランドの確立と伝達を行った上で,ブランドに愛着を持たせる戦略が必要と述べていた.
 Best paperはQuan Nguyenらによる”Where to Start? Exploring the Efficiency of Translation Movements on Multitouch Devices”であった.本研究は,フィッツの法則と腕に関する運動学を基に,様々な状況におけるマルチタッチの効率について徹底的に分析した,基礎的なインタラクション研究であった.なお,VR研究も幾つか発表され,バーチャル環境における可視化手法のセッションが組まれていた.
 筆者は,HCI in Healthcareのセッションにて,高齢者向けのスマートフォンでの歩行計測・支援アプリを開発し,彼らに3ヶ月間使わせた結果について報告した.この際の討論から,次なる研究の方向性についてのヒントを貰ったと考えており,幅広い分野の研究者から刺激されることの重要性を改めて感じた.
 なお,筆者が参加したセッションでのツイート内容は,次の URLで確認できる.
 http://togetter.com/li/875345 .興味があれば,ご覧頂きたい.
 次回のIFIP INTERACT 2017 (本学会は隔年開催)は,インドのムンバイで開催される予定である.筆者もDemo chairとして参加予定であり,日本からの多くの投稿を期待している.詳細は,次のウェブサイトにて今後公開される予定である.
 http://www.interact2017.org/

Category: 学会参加報告

この記事へコメントすることはできません