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2016年9月26日

SIGGRAPH2016(口頭発表)参加報告

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|◆ SIGGRAPH2016(口頭発表)参加報告
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上瀧剛(熊本大学)
 7月24日~28日にアナハイムで開催された第43回SIGGRAPH2016のTechnical paper
sセッションに参加してきたので報告する.今回,467件の投稿があり,119件の論
文が採択された(採択率25%).TOGに採択された43編の論文と合わせて合計119+43
=162件の発表が行われた.論文は41のセッションに分けられ,2ないし3つのパラレ
ルトラックで発表された.発表時間は18分+4分の質疑応答である.本報告ではComp
utational DisplayとDisplay Softwareの二つのディスプレイのセッションの発表
について述べる.
 Computational Displayでは4件の発表があった.Cinema3Dはparallax barrierを
拡張して,従来では困難であった映画館での全客席での裸眼立体視を可能とした.
具体的には,観客位置が既知で固定と仮定し,2枚のparallax barrierおよび,そ
の形状を曲面にする.スリットと曲面形状を最適化によって求めた.ミニチュア版
の映画館を試作し低解像度であるが全観客が裸眼立体視可能であることを示した.
実際の映画館サイズのparallax barrierをどうやって作るのかと当然のごとく質問
があったが今後の課題のようである.High Brightness HDR Projectionはレーザー
光源の光の位相をSLMで変調させて画像を投影するタイプのプロジェクタで,従来
のDMDのように光を直接遮断する訳ではないためエネルギー損失が少ない.本内容
は2014年よりE-Techで発表されて以来,地道に改良を続け,ようやくTechnical pa
perで発表された.今回の貢献は画像のボケや歪みを予め補正した位相画像をSLMに
反映させた点である.凸最適化で使われるprox(近接写像)を使っていることに驚
いた.Additive Light-Field DisplaysではAR用のシースルー型HMDにおいて,2枚
のホログラフィック光学要素(HOE)を使うことで解像度を上げた.Fairy Lights in
Femtosecondsではレーザープラズマによって空中に3D輝点を描画するもので,フ
ェムト秒波長のレーザーを用いることにより手で触れても比較的安全なシステムを
開発した.発表ではイントロと未来像について多くの時間を割いているのが印象的
だった.
 Display Softwareでは4件の発表があった.Emulating Displaysでは動画のフレ
ームレートを場所ごとに変える新しい映像表現法を提示した.例えば,動く人は60
fpsで背景は24fpsといった具合である.24fpsの映画の雰囲気を残しつつ,ブラー
などのアーチファクトを除去したいということである.GazeStereo3DはHMDなどに
おいて視線のトラッキングを行い,注目点の立体感がよくなるようにdepthを連続
的に変換する技術である.人間の目の視差は,視線方向や瞳孔の動きなどによって
必ずしも一定ではないためである.視線を動かすと徐々に焦点があうような感覚を
得ることができる.Binary-Continuous Image Decompositionは筆者が発表したも
ので,従来,On/Offのみで制御していたアクティブシャッター眼鏡に対して,中間
の透過率を許すモデルを提案した.これにより,複数画像間で共通する画像情報を
使いまわすことでビットレートを向上させ,従来方式で投影されていたブラックフ
レーム(シャッターを完全に閉じる状態)を避けることでフリッカを低減できる.
Seamless Visual Sharingではアクティブシャッター眼鏡を用いた色弱者のための
映像提示技術である.従来法としてX-Chormという片側レンズで色を強調できる方
法があったが,変換不要な色まで強調して不快感を与えていた.本手法では原画像
を色の異なる左右の2枚の映像に分解し,非色弱者はメガネなしだと残像効果によ
り原画像がそのまま見える.分解には色弱者の判別しやすさをコスト関数に最適化
を行い,マッピング関数を求めている.
 今回,筆者は初めてのSIGRRAPH参加であったが,CVPRと比べると無料の朝食やコ
ーヒーがでないという難点もあったが,デモ展示や企業の参加者が多く全体的に和
やかな雰囲気を感じた.機会があれば次回ロサンゼルスにも参加したい.
http://s2016.siggraph.org/

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