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2016年11月26日

VRST 2016 参加報告

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|◆ VRST 2016 参加報告
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伊藤 勇太様(慶應義塾大学)
 ACM主催のVRに関する国際会議であるVRST (ACM Symposium on The
Virtual Reality Software and Technology)は今年22回目を迎え,11月2日から4
日にかけて南独ミュンヘン近郊にあるLeibniz Supercomputing Centre(LRZ)にて
開催された.
 登録者数は146人と過去最大規模に上り,基調講演3件,論文発表39件(内ロン
グ22本,ショート17本),ポスター発表39件,デモ発表3件が実施された.投稿
数は117件であり,採択数(率)は39件(33.3%)となる.閉会式の授賞式では,Best
Paper Award 1件,Best Student Paper Award 1件,Best Poster Award 1件が与
えられた.論文賞2件に関しては,30%の新たな知見(new insight)を追加する条件
でIEEE TVCG採録に招待された.
 本年のVRSTでは例外的に3件もの基調講演が実施されている.1件目はBernd
Fröhlich 教授(Bauhaus-Universität Weimar, Germany)によるCollaborative
Virtual Reality.「複数人協働体験ができないVRはVRではない」との信念から,
CAVEを用いたVR環境での同時多人数による共同作業について講演した.一貫し
た作業環境・(ユーザー間の)確立した領土権・(作業の)補完性の三原則を掲げ,
VR共同作業の現状と展望について語っていた.
 2件目はNadia Magnenat Thalmann教授(Nanyang Technological University,
Singapore)によるSeeing Through Virtual Humans in motion: from the skin to
the molecules.Digital Humanと題し,人体を3Dデータ化する技術について80
年代から最近の研究について,外形のみならず骨格や筋肉といった内部モデルの推
定や,人体構造を模した手ロボットを紹介し,これらがどう生活や医療に生かせる
かについて講演した.
 3件目は暦本純一教授(東京大学)によるHuman Augmentation and the Age of
Internet-of-Abilities.動的な調光が可能なプログラマブル半透明窓であるSquama
に始まり,別の視点を体験するJack-Inのコンセプトに基づいた第三者視点を得る
システム,他人に自分の代理をさせるChameleon Mask等を紹介し,更に人の表情
に基づいたUIであるHappiness Counterについて述べた.
 Best PaperにはSra(MIT)らによる自動VR空間構築手法が選ばれた.これは実
世界を三次元再構築したモデルをもとに,同じ空間形状を持つVR空間を生成する
もので,テーマにそった空間を手続き的に生成する.会期全体を通してVRに限ら
ずARまで含んだ広範なトピックについて発表が行われており,例えばディスプレ
イ,遅延やVR酔い,触覚やトラッキング,3DUIに関するセッション等が行われ
た.
 また特別企画として,ドイツ博物館のプラネタリウムにて,地球の地殻変動を可
視化した映像展示が行われた.これは過去2億年にわたるマントルの変動をLRZの
スーパーコンピュータ,SuperMUCによりシミュレーションした結果が用いられて
いる.
 次回の VRSTはスウェーデンのイェーテボリにあるChalmers大学にて11月8
日~10日に開催される(http://vrst.acm.org/vrst2017/).
 最後に,Steering Committee から2018年と以降のVRST開催運営の提案を募
集しているとの話があった.ドイツ,スェーデンと欧州での開催が続く中,日本で
は2009年以降開催されていない.日本開催の提案が望まれているのではないだろ
うか.
http://www.vrst2016.lrz.de/

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